第一章 夏を奪う者炎暑日の終わりに夕立がきた。重い雨雲が道端に落ちてきたようだった。そんな雷雨の中、スーツの上着を傘代わりにした男が二人、悲鳴とも歓声ともつかぬ声を上げながら公園内から走り出てくる。「わぁーー、管理事務所に戻ろうか?」ずぶ濡(ぬ)れで叫ぶのは、尾崎颯(そう)である。「もう遠いって! ひゃーー、走れ、走れ!」そのあとを同僚の野上洸一が追ってくる。さっきまで草いきれで ...